東日本大震災の津波被害から復旧し、12年ぶりの海開きを控える楢葉町の岩沢海水浴場で10月にも、サーフィン大会が開かれる。震災と東京電力福島第一原発事故後、双葉郡での大会は初めて。サーファーとして古里の海を守ってきた吉田健太郎さん(36)は「岩沢には世界に誇る良い波が来る。魅力を発信し、地域のにぎわいにつなげる」と意気込む。
大会は震災前まで25年にわたり岩沢海水浴場で開かれてきた楢葉町長杯を復活させる方向で調整している。かつて、地元をはじめ関東圏などから約150人が出場した大会の再開を通して、地域の復興を発信する。
吉田さんは海水浴場から1キロほどの場所で生まれ育った。4歳上の兄の影響を受け、広野中3年の頃、サーフィンを始めた。
海水浴場の南側には広野町のJERA広野火力発電所があり、湾が入り組んだ地形はサーフィンに絶好の波がたち、プロや日本一の選手を輩出してきた。波乗りに適した南風が吹く日には、多くのサーファーが集まる。
吉田さんも風の向きや波のうねりを読み、自分の力だけで自然にあらがう、サーフィンの魅力に引き込まれた。湯本高を卒業後、米国カリフォルニア州立アーバイン・バレー・カレッジに進学し、経営経済学を学びながら、西海岸で4年間、技術を磨いた。
震災後、古里に戻り、家業の旅館ホテル業を継いだ。思い出の場所である海水浴場を守ろうと仲間とゴミ拾いや草刈りなどに努めてきた。町も7月16日の海開きに向け、砂浜に降りる階段や監視塔、トイレ、シャワーの整備を進めてきた。
今後、地元の仲間と大会の運営準備を進める。東京五輪でサーフィン競技が公式種目に採用され、国内の競技人口が増えている。「将来、この地から五輪選手を輩出し、国内外のサーファーのあこがれの場所にしたい」と夢を膨らませている。